ネイルサロンと育爪サロンの違い

「ネイルケア専門」「自爪専門」をうたうネイルサロンが増えてきましたが、ほとんどの場合は、素の爪そのままで施術が完了するのではなく、爪の表面を磨くか、透明または色のついた塗料を塗ります。そのようなサロンと育爪サロンの違いをご説明します。

すっぴんの爪のまま健康でキレイに

育爪サロンでは、すっぴんの爪のまま健康でキレイに育てます。すっぴんの爪のまま施術して、すっぴんの爪のままお帰りいただきます。素の爪が完成形です。爪の表面は磨きませんし、合成樹脂も塗りません。甘皮も切りません。爪と甘皮の間にすきま(ポケット)もつくりません。

合成樹脂なし

育爪サロンでは合成樹脂を使いません。合成樹脂は爪と一体化させることで、一時的に固めて保護することができます。しかし、合成樹脂の下にある素の爪は、水分や油分を保持したり、通気性を保ったりするための隙間が埋められてしまいます。また、爪がプラスチック(合成樹脂)で固められ、爪が本来持つ柔軟性も失われるため、指先に圧迫感や不快感を感じる場合があります。腕や足を骨折したときに患部を固定するギプスを装着した状態と少し似ています。ずっと装着しているのは身体にとって不自然で、無理が生じる可能性があります。

  • 合成樹脂には、ジェルネイル、スカルプチュア、マニキュア(ネイルカラー・ネイルポリッシュ・ネイルラッカー)、透明コート剤(ベースコート・トップコート・ハードナー)などがあります。
  • 顔料が入っていないものは透明で、顔料が入っているものは色がついています。
  • 合成樹脂の成分配合によって、厚みが出るものと、厚みが薄いものがあります。
  • 合成樹脂が保存容器に入っている間は、有機溶剤という溶かす薬剤が混ざっているため、液体やジェル状になっています。空気に触れて有機溶剤が揮発したり、特定波長の光(LEDライト・UVライト)を照射すると、元の硬さに戻って固まります。
  • 爪には目に見えない無数の小さな隙間が存在し、爪からは皮膚の2~3倍の水蒸気が揮発しています(出典:爪 基礎から臨床まで 改訂第2版)。
  • 合成樹脂を塗ると爪の表面がプラスチックで覆われるため、爪の通気性が失われて水分蒸発をさまたげます(参考情報:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A Q22.ジェル・ネイルを付けていますが、害はないでしょうか)。

有機溶剤なし

育爪サロンでは有機溶剤を使いません。合成樹脂を使わないため、それを溶かす有機溶剤が必要ないためです。合成樹脂を外すときに使う有機溶剤は、爪の質がもろくなり、爪表面がうろこ状にボロボロとはがれてしまう二枚爪の原因になります

甘皮処理なし

育爪サロンでは甘皮処理をしません。甘皮は雑菌や異物が侵入するのを防ぐ大切な組織だからです。

甘皮を押し上げすぎたり、切り取ったりすると、爪周囲炎や急性爪囲炎と呼ばれる、痛み、熱さ、赤み、腫れ、膿(うみ)などの症状が発生する場合があります。

また、甘皮処理は合成樹脂を塗るための事前の下地づくりなので、合成樹脂を使わない育爪サロンには必要がありません。

ネイルサロンやネイリスト検定試験では、メタルプッシャーという金属製の道具を使って、爪表面と甘皮の間に「ポケット」と呼ばれる隙間を積極的に作ります。爪の生え際ぎりぎりまで合成樹脂を塗れるようにしたり、塗った合成樹脂が爪の表面から浮き上がってこないようにするためです。

一方、育爪サロンでは、薄皮処理をします。薄皮処理とは、爪が育ちやすい環境をつくるために爪表面にこびりついた薄皮をはがして取り除くことです。

薄皮が伸びすぎていると、ささくれになったり、爪が正常に伸びるのを阻害したりすることがあります。

爪表面が傷つかないよう、先端がプラスチック製になっていて、前後に細かく振動するプッシャーマシンという道具を使います。特に足の指先など、普段あまり血行が良くない部分の爪表面をプッシャーマシンで振動を与えながら薄皮をはがしていくことで、血流が良くなってピンク色になったり、爪が良く伸びるようになったりします。

表面磨きなし

育爪サロンでは表面磨きをしません。爪の表面を磨くと本来の厚みより爪が薄くなり、少しの衝撃で爪が欠けるようになったり、冷水・温水に触れると痛みを感じるようになったりします。

ネイリスト資格なし

育爪セラピストはネイリスト資格を持っていません。ネイリスト資格は、カラーリングやスカルプチュアといった合成樹脂を爪にほどこす技術力を示すもので、合成樹脂を使わない育爪サロンには必要がないためです。一部の育爪セラピストは、ネイルスクール受講中に転向したり、ネイルサロンから転向したため、ネイリスト資格を持っています。

爪の形はアークスクエアのみ

育爪サロンでは爪の形は「アークスクエア」のみです。
アークスクエアは次の5つの特徴があります。

  1. 短い爪でも立体的に見える
  2. 先端のゆるいアーク(弧)が衝撃を受け流す
  3. 角の丸みが大きく物が引っかかりづらい
  4. 爪が伸びても扇形に見えない
  5. 側面から見てもスッキリしている

アークスクエアの最大のメリットは爪のピンク部分が大きく立体的なカマボコ形の爪が育ちやすいことです。
アークスクエアなくして、育爪は成立しません。

アークスクエアとスクエアオフの違い

ネイルサロンと育爪サロンの特徴

項目

ネイルサロン

育爪サロン

店内の様子
  • 様々な色の塗料入りボトルが展示されている
  • 有機溶剤の刺激臭がある
  • 合成樹脂を削った粉塵がある
  • 塗料、コート剤、除光液、リムーバー類がない
  • 有機溶剤の刺激臭がない
  • 素爪を削った粉塵がある
施術スタッフ
  • JNECネイリスト技能検定 取得者
  • JNAジェルネイル技能検定 取得者
  • 育爪セラピスト
ネイルケア
  • 合成樹脂を塗布する前の下地処理
  • 甘皮処理(爪表面と甘皮の間にすきま/ポケットを作る)
  • 爪の表面を磨く
  • 爪の表面を合成樹脂でコーティングする
  • 爪の断面に対して45度に爪ヤスリを当てる
  • 爪のピンクが伸びやすい長さと形に整える
  • 薄皮処理(爪表面の薄皮を取り除く)
  • 爪の表面を磨かない
  • 爪の表面を合成樹脂でコーティングしない
  • 爪の断面に対して90度(垂直)に爪ヤスリを当てる
爪の呼び方
  • 下地という意味で地爪と呼ぶ(例:地肌)
  • 付け爪(ジェルネイル・スカルプチュア)をしていないという意味で自爪(じづめ)と呼ぶ
  • 素の爪という意味から素爪(すづめ)と呼ぶ
  • 自分の爪という意味から自爪(じづめ)と呼ぶ
爪を保護する方法
  • 爪と合成樹脂を一体化させて固める
  • 素爪にオイルを吸収させて柔軟にする
  • 爪を当てない指の使い方を習慣化する
  • 衝撃を吸収・分散しやすい形にする
長さ出し
  • 爪と合成樹脂を一体化させて長く見せる
  • 一回の施術で長くなる
  • 爪のピンクが伸びやすい環境づくりを習慣化する
  • 爪が1か月で3mm伸びるのを待つ
ジェルネイルの落とし方
  • ジェルネイル表面を削って薄くし、有機溶剤で爪表面からはがす
  • 30~60分かかる
  • 爪が伸びた分だけ先端を紙製の爪ヤスリで削り落とす
  • 3か月以上かかる
施術に使う主な材料
  • 合成樹脂、有機溶剤
  • 有機栽培した植物の種子を低温圧搾した単一素材のオイル
爪の油分と水分
  • 合成樹脂を塗る前にプレプライマーという有機溶剤で爪の油分と水分を徹底的に除去
  • オイルを水と混ぜて乳化させ油分と水分で徹底的に保湿
爪の柔軟性
  • 爪と合成樹脂を一体化させて硬く固める
  • 油分と水分で保湿して弾力を出す
爪の通気性
  • 合成樹脂で爪のすきまが埋まり通気性が低下する
  • 爪本来の通気性がある
爪の厚み
  • 表面を磨いてツヤを出す場合は薄くなる
  • 合成樹脂と爪表面の密着性を高めるためにサンディング(爪の表面に小さな傷をける)する場合は薄くなる
  • 爪本来の厚みがある
爪のツヤ
  • 爪の表面を磨いてツヤを出す
  • ツヤのある合成樹脂を爪表面に塗る
  • オイルで素爪のツヤを出す